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人を好きになるということの入口を小学生の時に経験しました。 小学生の時、五年生のころ、それこそ本当に淡い片思いをしてしまいました。まあ、単に可愛いと思った程度で、好きになってしまったということはありませんし、口にしたこともありませんが、初めて好意を持ちました。まだ恋とは言えませんから初恋と言うほどではありませんが。 サザエさんの漫画で、カツオ君が、ちょっと好きな人が居ますが、あんなような気持だったでしょうか。 こっちを見てくれたらいいのにな、と思うような気持ちです。 でも付き合ってほしいとか、恥ずかしいから言えないのではなく、そう言いたいとまでには思いが募らなかったのではないかと自分では思います。 でも、心の片隅にはその人のことが意識されていました。 不思議なもので、77歳となった今でも覚えているのです。 五年生の時、私は乾電池を作りました。 このためには炭素が必要なのですが、短くなって使えなくなった鉛筆の芯を削って炭素の粉を作りましたが一本や二本では済まないものですから、同級生にたのみました。 「いらなくなった鉛筆があったら私に下さい」と。 皆が協力してくれ、どっと集まってきました。それで乾電池はできました。 ところが、その製作は終わったのですが、2,3日おきに私の筆入れの中に誰かが入れ続けてくれました。 筆入れを開いてみると短い鉛筆が増えているのです。 誰が入れてくれたかわかりませんが、大分の間続いたように思います。 それで、2回目、3回目と乾電池の製作実験をすることができました。 びっくりしたことをお話しします。 60歳前後の時の小学校の同窓会の話です。 通常と変わらない同窓会ですが、男子5人と、女子18人の学級でしたから、その日の同窓会に何人出席していたかはわかりませんが、とにかく両手に花でもまだ余るほどの同窓会です。 同窓会が終われば二次会です。 二次会は場所を変えて飲み直しですが、二つか三つのテーブルに分かれてにぎやかに話し合います。 私も大分飲んでいましたから、「俺はな、学校の時、あんたがちょっと好きだったんだよ!」と言ってしまいました。 そうしましたらどうでしょう。その人が、 「私もだったのよ」と答えたのです。 一瞬このテーブルは静寂になりましたが、次の瞬間、みんながどっとはやし立てます。 「何々?、今頃になって愛の告白?」、「もっと早く言っていれば結婚できたのに!」などと大騒ぎです。 よそのテーブルに居た人たちも集まってきて、「何があったの?」と話しに割り込んできます。 みんなの話題をさらってしまったのですが、本当にびっくりしたのは私本人です。 私が少し好意を持っていた人が、実は私を好いていてくれたことが分かったからです。 お互い口に出していませんでしたから、そんなことは分かっていなかったのですが、本当にびっくりしましたね。 ただ、どういうわけか、私がその人に好意を抱いていることはある程度クラスの人たちは薄々感づいていたようにも思われます。 たいていの同窓会の時には、私にいじめられた話が出ますが、「私はいじめられなかったわ」と言う人が居ると、みんなは、「あなたは中出君に好かれていたからね」、と笑い声が出ることがありました。 そのいじめられなかったという人が、この人なのです。 鉛筆を筆入れにこっそり入れてくれたのもこの人だったのかもしれません。 何も話したことはないのに、感づくものなのですね。これにもびっくりしています。 小学校の時にはこんな淡い思いを持ったのですが、それはそれで終わりで、中学に入るとまた別の話になります。 では中学校の頃の話をいたしましょう。 |
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