温室を作り
ランを育てる

 
自伝 温室 初めて温室を作ってからもう40年くらいになります。植物が好きで温室を作ったのではないのです。
植物の気持ちを感じ取るために作ったのです。温室で植物を育てると、植物が訴えてくるのです。
熱いとか寒いとか、肥料がないとか、そういう植物の気持ちを感じ取る練習をするために温室を作ったのです。この自伝においてこのことを初めてあかします。

実は37か38歳のころ、社長から言われたのです。
君は技術の面ではピカイチだけれども、もう少し人の気持ちを理解できるようにならないといけないよ、そうでなければいくら技術が出来ても人の上に立つことはできないからね、と。

そうは言われても、人の気持ちなどどうやったら分かるのかわかりませんでした。
どうだね、と聞いても必ず、大丈夫ですとか、分かりましたとか言って、不満は伝てくれないのです。

そこで考えたのです。
植物を育ててみたらどうだろう。植物ならばウソは言わないだろうから、人の気持ちを汲み取るためには先ず植物の気持ちを分かるようにするのがいいのではないかと考えたのです。
多少の土地の余裕もありましたので、ほんの小さな温室を作り、植物を育ててみました。

そうしましたら、社長から言われたとおり、植物の気持ちさえ分からないのです。
花が咲かないか、枯れてしまってから初めて気がつくのです。会社なら、ここには居られませんからと言って辞表を提出されるということです。
何がだめだったのか植物の気持ちさえ分からない自分がわかりました。

それからは植物の状態を丹念に観察し、土の乾き具合や温度などつぶさに見るように心がけました。
すると、植物は何らかのサインを出しているのです。
葉の色が黄色を帯びてくれば肥料切れですし、鉢の水がさっと引かなければ根ずまりです。
温度、湿度、風通し、光の当たり具合などいろいろありますが、だんだんそのサインが読めるようになってきました。

人の場合も同じでした。
何か頼んだ時、顔色に出るのです。わかりましたとは言っているのですが、表情が明るくないのです。
この植物のおかげで人の心と言うことにやっと気が付けるようになってきたのです。
そのおかげで部長にもなれ、取締役にもなれたわけです。

植物様様なのです。
温室も少し大きくし、暖房用のストーブも外付けタンクとし、自動温度調整できるようにしました。
ストーブも万全ではありません。ときどきエラーで止まってしまうのです。
寒い冬の夜中にエラーされたら植物は全滅します。
そのため、万一の時は電気ストーブがバックアップするようにしました。適温にはなりませんが、全滅はしない程度に保てます。

色々の植物を育ててきましたが、カトレアが一番長い付き合いです。
一昨年から胡蝶蘭を育てています。
温室の始まりは先に述べた通りですが、今はその植物が好きになってきました。
好きな道を歩むことが出来、悔いのない人生としてくれたのはこの植物たちのおかげだとも言えるのです。
この植物はこれからも大事に育てます。

この後、社会奉仕のことなど書いてみます。


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