忘れられない
思い出
蛍雪時代

 
大学受験のために本格的に勉強していました。そんな時に、それこそ一生忘れられない思い出ができたのです。
蛍雪時代という受験用の雑誌があり、その中に文通希望のページがありました。ここに載っていた女性に文通を申し込んだのが、私の人生最大の恋愛に発展していったのです。


蛍雪時代

大学受験というのはいつの世でも大変なことだと思います。
人生そのものを決定する時だと言う意味でも大切な時だと思うのです。
中には目標も持たず、どこでも良いから入れるところに入って、卒業するときに会社を決めればよい、と言う人もあります。
でも私の考え方はそうではありませんでした。
自分はどういう仕事をするべきかをここで決定し、そのためにはどういう大学に入る必要があるのかを決めてしまい、そのための受験勉強をしなければならないと言う考えです。

参考書は何冊も買うのではなく、一冊を徹底的に擦り切れるほど使い込みました。
そんな勉強をしている中で、受験生のための雑誌がありました。もう何十年も前のことですから、今でもあるのかどうか分かりませんが、当時、蛍雪時代、という名前の雑誌がありました。
色々の大学の紹介や、試験の傾向などが主体ですが、息抜きのページもあります。

当時はインターネットも携帯電話もありませんから、手紙が唯一の連絡方法です。当時はペンパルとかペンフレンドと言っていたように覚えています。
そういう手紙による文通をしませんかと言う募集欄がありました。20人か30人の名前と住所が書いてあるだけです。

そこへ手紙を出して見て、返事が来ればしめたもの。ただ、大抵は丁重な断りの返事です。
それはそうです、何万冊も発行されている雑誌に書いてあるのですから、あちらからもこちらからも、どっと来るでしょう。
その中から今後文通を続けたい人だけに返事を出し、後の人には返事しないか断りを出すわけです。
私は進路を考えたり勉強したりの緊張の続く毎日でしたので、ちょっと息抜きのつもりで適当な一人に手紙を出して見ました。
駄目元ですから、どうせなら女の子に出して見ようと思ったのです。

いや驚きました、直ぐに返事が来たのです。それも文通OKの返事です。
当時はワープロなどありませんから、私はへたくそな字で手書きするしかなかったのです。ですから絶対駄目だろうと思っていましたので、本当にびっくりしました。

後で分かったことですが、なぜ私を選んだのかと聞いて見ましたら、文章が面白く、言いたいことがはっきり分かり、この人が一番いいだろうと思って決めたのだそうです。
最初はそうでもありませんでしたが、私も大学に合格し、その方も大学に合格し、高校を卒業するころからは頻繁に手紙が行き来するようになりました。
どうしても会ってみたくなってきます。
だんだん恋へと入り込んでいくことになったのです。そうして本当の恋をしました。一生に一度の恋でした。
そのきっかけは、蛍雪時代のたった一行の住所氏名だったわけです。


自伝 TOP  忘れられない思い出